読み上げ環境別動作検証報告:基本的な要素の通知方法2012
2007年の5月に、私は基本的な要素が音声読み上げ環境でどのように通知されるかの検証レポートを書きました。同じWebコンテンツの読み上げであっても、使用している環境によって通知される内容が違うこと、一部の要素はJAWS等のスクリーン・リーダーでしか通知されないことをご紹介しました。
およそ5年が経過した今日、それぞれの音声読み上げ環境の通知方法にはどのような変化があるでしょうか?このエントリーでは、基本的な要素が、当社でテスト可能なデスクトップ向けの読み上げ環境とiPhoneのVoiceOverでどのように通知されるかを紹介します。なお、検証に用いたテストファイルや個別の検証結果については、以下の情報を参照してください。
なお、テストファイルや検証結果はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で提供しておりますので、ライセンスの範囲内であれば自由にご利用いただけます。
検証方法
この検証では、(X)HTMLでマークアップを行う際比較的利用頻度が高いと思われる以下の要素について、音声読み上げ環境がどのようにその内容を利用者に伝えるかを調査しました。
- 見出し
- <h1>~<h6>
- リスト
- <ul>
- <ol>
- <dl>
- 画像
- <img>
- リンク
- <a>
- 引用
- <blockquote>
テストでは、それぞれの環境にあるジャンプコマンドを用いて特定の要素にジャンプした際の読み上げを確認しました。例えば、見出しの読み上げを確認する際は、Hキーを用いて移動した場合と、数字キーを用いて特定レベルの見出しにジャンプした際の読み上げをチェックしました。
結果と考察
この条件で読み上げをチェックしたところ、以下のようなことがわかりました。
- すべての環境で要素を読み上げる際、見出しやリストなど、何らかのメッセージを付加することで利用者に個別の要素を通知している。
- 文書構造を表現する上で重要な要素のひとつである見出しについては、すべての環境で何らかの通知が行われる。
- すべての環境で特定レベルの見出しにダイレクトにジャンプできる。
- すべての環境でリストを通知できる。
- JAWS、NVDA、VoiceOverでは順序付きリストの番号を通知できる。
- JAWSとMac OSのVoiceOverでは、定義リストを他のリストと区別して読むことができる。
- 引用文を表現するためのblockquoteは、JAWS、NVDA、Mac OSのVoiceOverで通知される。
2007年に行った検証結果と比較すると、音声読み上げ環境におけるWebコンテンツの基本的な要素の読み上げはとても進化しました。ほぼすべての環境で基本的な要素を何らかの方法で通知できるようになったことは、利用者の利便性を向上させる意味でとても素晴らしいと思います。
制作者が適切にマークアップしたコンテンツを、支援技術が適切にレンダリングし、それを使って利用者が効率よく目的の情報を得ることができる環境が整いつつあるのだと実感しました。
2012年9月11日追記
検証結果公開後に、PC-Talker、NVDA及びVoiceOver (Mac OS 10.7)に関する以下の記述に誤りがあることがわかりました。お詫びして訂正いたします。
PC-Talker 7に関する記述の誤り
記事中及び検証結果ページで、PC-Talkerは初期状態ではジャンプコマンドが使用できないため設定変更が必要としておりましたが、特に設定を変更しなくともジャンプコマンドが使用できることがわかりました。
NVDAに関する記述の誤り
検証に用いたNVDAのバージョンが2012.1となっておりましたが、2012.2.1の誤りでした。
検証結果ページの中で、NVDAが定義リストを通常のテキストとして読み上げるとの記述がありましたが、定義リストもリスト項目として読み上げられることがわかりました。
VoiceOver (Mac OS 10.7)に関する記述の誤り
順序付リストの読み上げ例の記述に誤りがありました。正しい読み上げ例は次の通りです。
- 例:リスト2項目、1. ol要素内のli要素の内容1
また、定義リストの読み上げ例の記述に誤りがありました。正しい読み上げ例は次の通りです。
- 例:定義リスト2項目、dl要素内のdt要素の内容
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