「辻ちゃん・ウエちゃんのアクセシビリティPodcast」第24回 前編
アクセシビリティPodcast、第24回 前編をお届けいたします。偶数回である今回は「Webアクセシビリティ」をキーワードに、ゲストをお迎えする「Mission accessible」をお届けいたします。今回はWebアクセシビリティに関するガイドライン作成メンバーでもある渡辺隆行さんをお招きしております。 どうぞお楽しみください。
なお、このPodcastは2008年9月に収録がおこなわれたものであり、公開時とは情報が異なっていることがございますので、ご注意ください。
概要
第24回 前編では以下の内容をお届けいたします。
- 渡辺隆行さんがWebアクセシビリティに関わってこられたきっかけ
- JISとの関わり
- UAI研究会について
なお、話題にあがっているサイトなどのリンク先につきましては、「全文を読む」のリンクよりテキスト化された内容でご確認ください。
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それでは、どうぞお楽しみください!
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「辻ちゃん・ウエちゃんのアクセシビリティPodcast」第24回 前編 テキスト
- 植木、辻(以下、二人):
- 辻ちゃん、ウエちゃんのアクセシビリティPodcast!シーズン4(フォー)!いぇーい
- 辻:
- はい、第24回目となりましたアクセシビリティPodcast、本日もミツエーリンクスのスタジオからお送りいたします。私は辻ちゃんこと、ミツエーリンクスの辻勝利です。そして、
- ウ:
- はい、ウエちゃんこと、インフォアクシアの植木です。
- 二人:
- よろしくお願いしまーす。
- 辻:
- いや、ウエちゃん、24回
- ウ:
- はい、
- 辻:
- シーズン4の最終回となってしまいました。
- ウ:
- シーズン4ファイナル。
- 二人:
- はい、
- 辻:
- 今日もはりきってお送りしていきたいと思います。
- ウ:
- はい、
- 辻:
- 今回、偶数回はですね、毎回ゲストの方をお招きいたしまして、Webアクセシビリティを高めていくためには、Webにかかわる全ての方たちが協力し合う事が必要であるという、アクセシビリティHUB構想を実現するためにですね、辻ちゃん、ウエちゃんと共にトークを展開していただこうと思うのですが、
- ウ:
- ミッションアクセシブルでしたっけ?
- 辻:
- そうですね。
- ウ:
- はい、
- 辻:
- はい、今回もミッションアクセシブルをお届けしたいと思います。
- ウ:
- はい、
- 効果音:
- 電話音
Mission accessible!
- 辻:
- それでは、ミッションアクセシブル、今回のゲストをご紹介したいと思います。今回はですね、東京女子大学の渡辺隆行さん、えー、ナベさんということで、お話をしていきたいと思います。自己紹介をお願いできますか?
- 渡辺隆行(以下、ナ):
- はい、初めまして。東京女子大学の渡辺と申します。まぁ、あの自己紹介ということで、僕の小さい頃からを振り返ってみるとですね、僕はもともと宇宙飛行士になりたくて、
- 辻:
- ああー、すごい。
- ナ:
- あの小学校の頃に、アポロ宇宙船が月着陸に成功したんですよ。
- 二人:
- おおー、
- ナ:
- あれを生で見ているんですよね。
- 辻:
- あ!すごい!
- ウ:
- へぇー、
- ナ:
- で、ずっとなりたくて、それで中学校に入って、ある日、本屋さんで、講談社の『ブルーバックス』っていう本を読んだときに、『絶対零度への挑戦』っていう本があったんですね、
- 辻:
- はい、
- ウ:
- ふーん、
- ナ:
- で、その本を読むと、なんと温度には最低の温度があると、
- 二人:
- はい、
- ナ:
- 摂氏-273.15度より下の温度はないと書いてあったんですよ。
- 辻:
- はい、
- ウ:
- へぇー、
- ナ:
- 上はいくらでも熱くできるんだけども、下の温度には絶対零度があると、
- 二人:
- へぇー、
- ナ:
- 絶対零度になると空気も何もかも全部凍ってしまうし、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- 超伝導が起きたり、超流動が起きると。で、コップから水が超流動で勝手に流れ出していくと、書いてあって、(編注:発言者による修正、「正しくは水ではなくてHe」)
- 二人:
- はい、
- ナ:
- それでびっくりしたわけですよ。
- ウ:
- へぇー、
- ナ:
- なんて物理っておもしろいんだろうって、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- よし、僕は物理学者になろうと、
- 辻:
- はい、
- ウ:
- へぇー、
- ナ:
- 調べていくと、日本には湯川博士とか、朝永博士とかいて、ノーベル賞とっているんですよね、ノーベル物理学賞。
- 辻:
- はい、
- ナ:
- よし、僕は物理学者になって、ノーベル賞とろうと思って、
- 二人:
- はい、
- ナ:
- それで、ずっと物理の勉強していて、大学も物理学科に入って、で、大学院にもいって、物理で博士号をとった、
- 二人:
- はい、
- ナ:
- で、大学で、助手で大学に就職してずっと物理をしてたんですけど、どうもその、物理って人間の世界から離れすぎていると、
- 二人:
- ああー、
- 辻:
- とってもおもしろいんだけど、はい、
- ナ:
- 人間と関係ないんですよね、物理って。
- 二人:
- うーん、
- ナ:
- で、少し悩んでいるときに、アメリカの大学院生のRamanっていう全盲の大学院生が、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- 彼がその、自分が博士論文を書くために、Emacspeakという音声化システムを使ったっていう本を読んだんですよ。
- 辻:
- はい、
- ナ:
- 彼は、だから全盲の人だから、読み上げなければ使えない、しかも数学の論文なので、数式を書く必要があると、
- 二人:
- はい、
- ナ:
- でもそれに使えるようなシステムはなかったと、
- 辻:
- うーん、
- ナ:
- 彼は自分で、Emacspeakを作っちゃったわけですよね。
- 辻:
- はい、
- ナ:
- それを読んでびっくりしまして、Emacsというソフトは僕も使っていたんですね、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- それがしゃべるんだと、しかも数式をちゃんとしゃべる、
- ウ:
- うーん、
- ナ:
- これはなんておもしろいんだろうと思って、これを日本語化したいと思ったわけです。
- 辻:
- はい、
- ナ:
- それがそもそも、この情報福祉の世界に入ったきっかけで、
- 二人:
- ああー、
- ナ:
- そうすると、日本でも同様に興味を持っている人が他にたくさんいたので、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- そういう、井上君とか、そういう人たちと一緒に、Emacsの日本語化をしようと、Bilingual Emacspeakを作ろうと、
- 辻:
- はい、
- ウ:
- うん、うん、うん、
- ナ:
- 日本語でも英語でもしゃべる、っていうのでBEPっていって、Bilingual Emacspeak Projectっていうのを立ち上げて、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- その日本語化、Windowsでも動くし、Linuxでも動くという音声システムを作ってたんですよね。
- 辻:
- はい、
- ウ:
- ふーん、
- ナ:
- で、作るために物理をやめたんですけども、どうも当時勤めていた大学っていうのがよくなかったので、どっか移りたいなと思っていたので、
- 辻:
- ははは(笑)
- ナ:
- そしたら今勤めている東京女子大学が情報の先生を探していると、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- 物理をやっていたので、情報はできるので、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- 応募したら幸い採用されて、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- それで、まあ情報教育を教える先生として今の大学に移りましたと、
- 辻:
- なるほどー。
- ナ:
- だから、僕は大学では情報の先生、コンピューターの先生だと思われています。
- ウ:
- へぇー、
- ナ:
- でもまぁ、僕にとって情報っていうのは、あくまで生きるための手段であって(笑)
- 三人:
- (笑)
- 辻:
- なるほど。
- ナ:
- これで飯を食っているんだと、
- 辻:
- あー、はいはい、
- ナ:
- 本当にやりたいのは別で(笑)
- 三人:
- (笑)
- ナ:
- まぁ、東京女子大学で何ができるかって考えたときに、ちょっとBEPは難しいなと思っているときに、ちょうど、それが2003年くらいですか、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- 日本にもJISっていう、JISという日本工業規格で、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- Webアクセシビリティのガイドラインが作られるっていう話を聞いて、あ、おもしろそうだなと思って、
- ウ:
- うん、
- ナ:
- どんなものなのかなと思って、見に行ったんですよね。
- 辻:
- はい、
- ナ:
- それが2003年の多分5月頃です。
- 二人:
- はい、
- ナ:
- そうすると、どうも内容がよくないと、
- ウ:
- うーん、
- 辻:
- あー、
- ナ:
- もともと世界には、W3Cが、WCAG、Web Content Accessibility Guidelines 1.0っていうのを1999年に作っていて、
- 二人:
- はい、
- ナ:
- 世界中に普及してます。
- ウ:
- うーん、
- ナ:
- だから、僕はそれを日本語化すればJISになると思っていたんだけれども、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- どうも、それとは違う方向にいっていると、
- 二人:
- おおー、
- ウ:
- それとは違うものを作ろうとしているっていうのが見えたので、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- これはよくないなと思ったんですよね。
- 辻:
- はい、
- ウ:
- うーん、
- 辻:
- 具体的にどの辺がこう、なんていうか先生のお考えになるガイドラインの形と違ったんでしょう?
- ナ:
- あのー、その時のJISっていうのが、国内でいろんな企業とか、官庁とか組織が作っているガイドラインを収集してきて、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- まとめたようなものだと思うんですけども、
- 辻:
- ああー、はい、
- ナ:
- もともと、そういうガイドラインて全部、JISでも、WCAGの影響を受けているので、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- 結局その、WCAGを一部だけ取り上げて、変形したものをさらに集めているので、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- とても変なんですよね。
- 辻:
- ああー、
- ナ:
- で、もともとWebっていうのは、日本だろうと海外だろうと、同じであるべきですよね。
- 辻:
- はい、
- ナ:
- Webのコンテンツって世界中で読めるんですから、
- 辻:
- そうですねー、
- ナ:
- それが、日本だからこうなんだってするのは、ちょっと違うんじゃないか、なるべく同じにしないといけないんじゃないかって、で、人が作ったものが嫌だっていう考え方が間違っていると思ったんですね、
- 辻:
- あー、はいはいはい、
- ナ:
- それで、まぁ、JISっていうものに興味を持って、そのWebアクセシビリティに関わりだしたっていうのが、多分、僕が今、Webアクセシビリティをやっているそもそものきっかけかなと思います。
- 辻:
- なるほど。
- ナ:
- いつのまにか宇宙飛行士になろうと思っていたのが、
- 辻:
- はい、
- 三人:
- (笑)
- ナ:
- 全然関係ない世界にいっちゃったという(笑)
- 辻:
- あー、なるほど。えーと、ところで、僕もウエちゃんもナベさんと、UAI研究会というところで、一緒に活動させていただいているんですが、このUAI研究会ってどういう組織になるんですかね?
- ナ:
- はい、よくぞ聞いてくださいました。
- 辻:
- あっは(笑)
- ナ:
- UAIっていうのは、Universal Access to the Internetの略です。
- 辻:
- はい、
- ナ:
- 日本語でいうと、高齢者と障害者のインターネット利用という意味で、UAIっていっています。
- ウ:
- はい、
- ナ:
- これはもともと、ITRCって、アルファベット4文字の日本学術振興会の産学協力委員会っていうのがあって、
- 二人:
- はい、
- ナ:
- その中にあるインターネット技術研究委員会、Internet Technology Research Committee だから、ITRC、
- 辻:
- あー、なるほど、
- ウ:
- ほぉー、
- ナ:
- そういう活動があるんですよね。
- 辻:
- はい、
- ナ:
- これはもともと、インターネットの創成期に、インターネットの運営に関わった人が作っていた組織なんですけども、その中に、UAIとしてインターネットのアクセシビリティを考えようと、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- いう、分科会があって、僕はまぁその主査をしているので、
- 二人:
- はい、
- 辻:
- その活動として、UAI研究会っていうのを2006年5月に立ち上げました。
- 二人:
- はい、
- ナ:
- で、これは毎月1回、原則第3土曜日に、東女のキャンパスで土曜日の午後に研究会を開催しています。そこでは、Webのアクセシビリティに関する論文をしっかり読むと、それ以外にWebのアクセシビリティに関する、例えば、産業界の活動であるとか、
- 辻:
- うーん、
- ナ:
- あるいは、重要なアクティビティを報告し合う、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- さらには、若手の教育として、若手に対していろいろ教える、っていうこともやろうと、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- と、いうことで、そういうものを立ち上げました。
- 辻:
- はい、
- ナ:
- で、僕にとってはそうすることで、お互いに、自分が1人では読めない論文も、読んでもらえるし、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- いろいろな活動も知れる、そこに、UAI研究会に日本のコアな人たちが集まって、お互いに、情報交換できればいいなと思ってやっています。
- 辻:
- はい、
- ナ:
- そっから出てきたのが例えば、去年、秋に出した、『Webアクセシビリティ』。毎日コミュニケーションズから出版した、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- あの、『Webアクセシビリティ』っていう翻訳本だったり、あるいは去年の後半から始めている、辻ちゃんらと始めているNVDA、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- NVDAは何の略?
- 辻:
- NonVisual Desktop Access っていうんですけど、これ、最近は結構NVDAって、みんないっちゃってますね。
- ウ:
- ふんふんふん、
- ナ:
- NVDA、オープンソースのスクリーンリーダーですよね。
- 辻:
- はい、
- ナ:
- これを日本でも使えるようにしようという活動などもやっています。
- 辻:
- はい、
- ナ:
- で、僕自身がこれをやることによって、Webの世界のいろんな、もちろん論文が読めるし、いろんな活動ができるし、
- ウ:
- うん、
- 辻:
- で、大学の教育においては、卒論でアクセシビリティの研究をやっているので、
- ウ:
- はい、
- ナ:
- その研究と絡めることで、自分自身の研究もできているし、っていうわけで、僕の今の活動の一番のパワーの根源というか、こっからいろんなものが出てきてるなっていうことに、
- 辻:
- ああー、
- ナ:
- そういう研究会ですね。
- 辻:
- なるほど。
- ウ:
- 結構あれですよね、ゼミの学生さんたちもつっこんだテーマでアクセシビリティの論文を書いてますよね。
- ナ:
- そうですよね。
- 辻:
- そうですよねー、あの僕も、先日論文の発表を聞かせていただいたんですけど、本当にみなさん、しっかり研究されてるなって、自分が学生だったころのことを考えると、大きな違いを感じてしまったんですが、
- ナ:
- 東京女子大学の特徴としてやっぱり、女の子なので真面目なんですよね、
- 二人:
- ああー、
- ナ:
- 指導すれば、指導に応えてくれる、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- しなければ、何もしない(笑)
- 三人:
- (笑)
- ナ:
- 非常に手間のかかる娘たちという感じです(笑)
- 辻:
- なるほど(笑)
- ウ:
- でも、あの、そのある論文がベースになって、W4Aという、
- 辻:
- はい、
- ウ:
- アワードを、先生、論文、
- ナ:
- そうですね、
- ウ:
- 受賞されたんですよね。
- 辻:
- えーと、2年前の志村さんと一緒にやったWebの構造化という卒論で、その卒論っていうのが、よくそのWCAGでもよくいうけど、見出しをつけろと、
- ウ:
- はい、
- ナ:
- h1、h2、h3、Webコンテンツにそういう構造があったら、正しいヘディング要素でマークアップしようというけども、
- ウ:
- うーん、
- ナ:
- それは、本当に必要なのかと、
- ウ:
- うーん、
- ナ:
- マークアップしたコンテンツていうのが、ユーザビリティとか、アクセシビリティが本当に向上するのか、
- ウ:
- あぁー、
- ナ:
- っていうのを、実験で確かめようと、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- っていうので、晴眼者、視覚障害者、それぞれに対してマークアップしてあるコンテンツと、見た目はまったく同じなんだけども、マークアップしていないコンテンツで、比較するという研究をやったんですよね。
- ウ:
- うん、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- それは、卒論でもやって、さらにそれを発展させて、Web-4-Allという、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- W4Aとよくいいますけども、学会で発表したら幸い、論文賞もらえて、
- 辻:
- はい、
- ナ:
- おかげで、名前が売れたので、とってもうれしいです。
- 三人:
- あっ、はははは(笑)
- 辻:
- なるほど、
- ナ:
- 海外で売れました、名前が、
- 辻:
- あー、
- ナ:
- 国内では誰も、見ていないので(笑)
- 辻:
- (笑)
- ナ:
- 知らないと、
- 辻:
- はい、なるほど。と、いうことで前半、もうそろそろ15分がたとうとしているのですが、ナベさんがこれまでWebアクセシビリティにかかわってこられたきっかけをお話を伺ってきたのですが、後半では、さきほど少しでてきましたが、JISの今後を。JISが改訂されるという話があるんですが、その辺の話を中心に伺っていきたいと思います。
- ウ:
- はい、
- 辻:
- えっと、前半ちょっといったん、この辺りで締めたいと思います。
- ナ:
- はい、どうも。
- 辻:
- えー、後半も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
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