アクセシブルなサイトができるまで(その4)
今回のエントリーではサイト作成後の運用について考えていきたいと思います。従って、タイトルである「できるまで」ではなく、どちらかといえばできてしまったあとの話となるわけですが、「より」アクセシブルなサイトができるまでの話として考えていただければ幸いです。
さて、前回までの内容で目的に沿ったアクセシブルなWebサイト作りのためにするべきことを決めました。その後、その内容ごとに実装し、検証も終えてサイトがオープン(またはテストオープン)したとします。もちろん、制作者としてはここで一息つけるわけですが、アクセシビリティを考慮したWebサイトを運営していくに当たって、本当の勝負どころはこのあとの運用にかかっている、と筆者は考えています。
では何故運用が大事なのでしょうか?
それは、アクセシビリティに関する評価というものが実際にユーザー(もしくはテストユーザー)がアクセスしてから決まることだからです。その評価を大きく分類すると「アクセスできない」「アクセスしにくい」「アクセスできる」「アクセスしやすい」のように分けることが可能だと思われます。まず、「できない」とか「しにくい」という評価では問題があるのは明白です。アクセシブルなサイトを目的としてきたわけですが、それが無駄だったということになってしまいます。この場合、目的の見直し、問題点の調査など、かなり前の段階まで戻って作業をやり直す必要があります。一方、「できる」「しやすい」という評価が得られた場合はどうでしょうか。もちろん、「しやすい」であればこの時点においてはプロジェクトとして成功、「できる」であってもある程度成功といえるでしょう。ですが、大多数のWebサイトにとって、サイト運営はここで終わりではありません。
サイト運営者であれば気づかれた方も多いと思いますが、大抵のWebサイトには「更新」という作業があるわけです。ただし、更新に関しては個人で運営しているWebサイトであればそれほど大きな問題ではないかもしれません。なぜなら、その場合は情報発信者(コンテンツの情報を提供する人、またはそれを管理する人)=更新担当者(直接的な更新、例:HTMLを書き換えるなど、を行う人)となるからです。しかし、企業や自治体など一定以上の規模のサイトとなると、情報発信者と更新担当者が同一人物であることは稀ではないでしょうか。ということで、ここに問題が生じてくることになります。情報発信者の意図が更新担当者に伝わっていない場合、更新が行われるにつれ、サイト構造が破綻したり、アクセシビリティが低下したりしていくことになります。
そこで情報発信者側の意図をいかにして実際に更新を担当する人に伝えるかが運用における重要なポイントのひとつとなります。サイト規模が小さい場合には直接伝えていく、というのも方法のひとつではあるでしょう。しかしながら、大規模な場合または小規模でも担当者が変わることなどを想定した場合、規定や指針などを策定し文書という形で伝えていくことが必須になると考えられます。ここでも大事なことは「目的」を見誤らないことです。例えば、どんなに素晴らしい指針を作ったとしても、内容が難解で更新担当者が理解できなければまったくの無駄になってしまいます。どれだけ更新担当者に意図を理解してもらえるか、そしてそれに沿って更新が行われるか、そのことこそが最終目標であることを忘れてはなりません。
以上のように、今回のエントリーでは運用における注意点を述べてまいりました。今回挙げた点のほかにも、問い合わせへの対応や更なるサイトリニューアルなど、一度完成したあともWebサイトの運営にはなかなか終わりというものはありません。このように先の長いプロジェクトであるからこそ、できるだけ早い段階からしっかりとした計画で進めていくことが大切だということは感じていただけましたでしょうか。その上で、常に「アクセシブルなサイトができるまで」という考えの下、企画から運用まで進めていただければ、アクセシビリティの高いサイトが作成・維持できるのではないかと思います。
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