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統計から考えるWebアクセシビリティの重要性

2006年3月22日
アクセシビリティ・エンジニア 中村

アクセシビリティに配慮したWebサイト制作を敬遠する理由として挙げられることのひとつに、コストをかけるのに見合うほどユーザ数が多くない、という意見があります。たしかに20、30代のインターネット利用率に比べて、70、80代における利用率は高くないでしょう。ですが、本当にコストに見合わないから考慮する必要はないといえるほど、アクセシブルなサイトを必要とする人は少数派なのでしょうか。

総務省の平成16年「通信利用動向調査」によると、平成16年末でのインターネット利用者数は前年比218万人増で7948万人と推計されています。従って、現時点ではおそらく8000万人を超えているものと思われます。このうち、Webアクセシビリティに配慮することによって利用が可能になる、またはより簡単に利用できるようになるといった、大きな影響を受ける人数がどのくらいであるのかを考えてみたいと思います。

まず、高齢者の利用者数をいくつかの統計を基に推定してみます。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」によると、平成17年の65歳以上の推計人口は約2540万人となっています。また、前述の総務省の調査には平成16年末における65歳以上のインターネット利用率が17.5%というデータがあります。これらの数値を利用して単純計算してみると、約444万人の高齢者がインターネットを利用していることになります。もちろん、この計算は統計学的には正しいものではないですが、ある程度の目安にはなると考えられます。さらに、今後は利用率、高齢者人口ともに増えていくことは間違いなく、より多くの高齢者がインターネットを利用することが見込まれるわけです。

次に障害者の利用者数はどうでしょうか。厚生労働省の平成13年身体障害児・者実態調査結果によると、当該年における障害者総数は約325万人です。情報通信政策研究所の障がいのある方々のインターネット等の利用に関する調査報告書(平成15年)では、インターネットを利用している人は、回答された方の45.6%となっています。先ほどと同様に単純に計算しますと、ふたつのデータから導き出される障害者の利用者数は約150万人ということになります。尚、この数字については調査がウェブコンテンツJISの発行前である為、JIS発行にともなうアクセシブルなサイトの増加やインターネット環境の変化(高速、低価格化)を考慮すると、こちらも現在の方が多くの利用者がいること、また今後増えるであろうことが推定されます。

この他にも子供や外国人などを含むことを考えても、以上のデータだけでもかなりの人数がプラスの影響を受けることがわかるかとは思いますが、さらに別の角度からも444万人、150万人という数値について考えてみます。これらの数値が8000万人に占める割合は高齢者で約5.5%、障害者は約2%ということになります。さて、これだけですと、やはりたいしたことないのではと考えられてしまいそうですので、この割合が意外と大きなものであることを実感していただく為に次のようなデータと比較してみることにしましょう。

OneStat.comによる 2006年1月 各ブラウザのシェアに関する統計
ブラウザ名シェア
Microsoft Internet Exploler85.82%
Mozilla Firefox11.23%
Apple Safari1.88%
Opera0.77%
Netscape0.16%

これはOneStat.comというオランダのWebに関する解析などを行う会社が今年の1月31日に公開した資料の一部です。このデータは世界での数値ですので、当然のことながら日本国内の状況とは違ってきますが、SafariやOpera、Netscapeのシェアの割合と比較することで、Webにおける5.5%や2%の大きさが実感できると思います。

どのブラウザによるアクセスが多いかということは、一般にサイト制作・運営上、重要なポイントのひとつと考えられ、アクセスログの解析データは企業などでもよく利用されていると思われます。このようなデータがある中、比較的少数派に思われるブラウザへの配慮をする企業は少なくないはずです。

アクセスログには高齢者や障害者を含め、アクセシブルなサイトを求める人のアクセス数は表れません。しかしながら、Webアクセシビリティによりサイトが利用可能になる人々が多数いること、これからより多くなっていくことが統計から見えてくるわけです。

もちろん、クロスブラウザ対策とアクセシビリティへの配慮ではさまざまな面で違いがあるでしょう。とはいえ、少数派への配慮という意味ではどちらも同様に重要なはずです。さらにいえばクロスブラウザ対策とは違い、アクセシビリティへの配慮が欠けてしまうことにより全く内容を理解することができなくなってしまう人がいるということも忘れないでいただきたいと思います。

というわけで、いくつかの統計を基にWebアクセシビリティの重要性について考えてみました。当然のことながら、人数の多い少ないは本質的に重要なことではありません。けれども、特にビジネスの世界では数値の与える影響は非常に大きく、少数派に対する配慮は法規制でもない限りなかなか行われないのが実情です。Webアクセシビリティを必要とする人は往々にして少数派だと考えられがちですが、そうではないということを今回のエントリーで感じていただければ、と思います。

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