Webサイトのアクセシビリティを高めるための方法や国内外の関連情報など、さまざまな角度からWebアクセシビリティに関する話題をご提供していきたいと思います。
2006年05月22日
技術に依存しないアクセシビリティ
アクセシビリティ・エンジニア 中村
「下記詳細をご覧になるにはこちらをクリックして下さい。」
この一文を読んだ時に何か感じることはありますでしょうか。実はこのたった30文字弱、1行の文章にいくつかのアクセシビリティに影響するポイントがあるのです。
- 「こちら」
いわゆる「こちら」リンクはアクセシビリティに関わる問題として比較的有名なので、気づかれた方も多いと思います。この問題は主に非視覚系ブラウザを利用した際に、リンクがある部分だけにフォーカスしていく機能(つまり「こちら」の前後の文章がわからない)を使うと、リンク先が全くわからないというところにあります。「こちら」とだけ言われても、どちら?となるわけです。
- 「クリック」
ご存知のとおり「クリック」とはマウスを使用して行う動作です。では、マウスを使わないもしくは使えないユーザーはそのリンクにはアクセスできないのでしょうか? たいていの場合においてそんなことはないでしょう。にもかかわらず何故「クリック」と表記されているのかといえば、そのコンテンツを制作した人がマウスを利用しているからであり、他の環境の事を考慮しなかったからであると推察されます。
- 「下記」
「下」という表現は視覚的要素に依存しています。もちろん音声ブラウザなどの非視覚系ブラウザであっても、前後関係を把握することはできますので全くわからないということはないでしょう。ですが、他の表現の方が適切であることが少なくないのではないでしょうか。
- 「ご覧になる」
「ご覧になる」は「見る」の尊敬語です。「見る」という言葉は視覚と強い結びつきを持っている為、ユーザーによっては違和感を覚えるかもしれない、という問題があります。ただ、本来「見る」は広い意味を持った言葉なので、この表現については必ずしも非アクセシブルではないとも考えられるのですが、他の言葉で置き換えることも可能であると思いますし、文章を書く際には固定観念にとらわれないように注意していただきたい、ということでポイントのひとつとして挙げてみました。
以上のように、短い一文から4つのポイントを挙げてみました。どの問題も情報の入手や機能の利用できなくなるわけではないし「たいした問題ではない」とお考えの方もおられると思います。しかしながら、この一文をわかりやすいものにすることも「たいした問題ではない」のです。とかくアクセシビリティといいますと、なんらかのツールが必要とか、要素や属性を記述しなければなどと技術面に関わらないコンテンツ作成者には難しく捉えられがちですが、状況によって適切な文章を書くということがアクセシビリティを大きく改善することもある、ということも感じていただければと思います。
最後になりましたが、冒頭の一文を書き換えた例を挙げてみます。尚、(コンテンツ名)の部分には「下記」にあるものの名称などが入ります。
「詳しくは(コンテンツ名)詳細をご参照ください。」