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CSUN 2014セッションレポート2:WAI-ARIAの基礎

2014年3月21日
アクセシビリティ・エンジニア 黒澤

米国サンディエゴで開催中のCSUN 2014では、3月20日もセッション発表が行われています。この記事では、3月20日のセッションの中から気になったトピックスを紹介します。

WAI-ARIA 1.0の基礎

今年のCSUNではWAI-ARIA(Accessible Rich Internet Applications)に関する発表が数多く行われています。CSUN 2014では1つの時間枠に最大で20を超えるセッションが並行して行われることもありますが、1つの時間帯にWAI-ARIAに関連するセッションが複数行われることも珍しくありません。

その中でもSSB BART GroupのJonathan Avila氏とBryan Garaventa氏によるThe ARIA Technology Stack: Browsers and Screen ReadersはWAI-ARIAに関する基礎的な内容をまとめたものになっていました。

WAI-ARIAは、Webページの一部として作られたユーザーインタフェースが、HTMLのセマンティクスで表現できる範囲を超えてしまい、支援技術にセマンティクスを伝えることができないという問題に対処するために作られました。WAI-ARIAの語彙は大きく3つの領域にわかれます。文書の大まかな構造(ランドマークなど)、リッチなインタフェース(ツリーやアコーディオンなど)、動的なコンテンツ(ライブリージョン)です。

WAI-ARIAは要素のセマンティクスを変更し、そのセマンティクスはAccessibility APIを通して支援技術に提供されます。WAI-ARIAを指定しても要素の機能や見た目は変わらないため、WAI-ARIAを使ったコンテンツをアクセシブルにするには、開発者が機能と見た目を実装/調整する必要があります。セッションではjQuery UIやDojo/DijitをはじめとするJavaScriptライブラリがWAI-ARIA 1.0への対応を行っていることが紹介されていました。

WAI-ARIAのサポートは環境によって異なるものの、スクリーン・リーダーは何らかのレベルでWAI-ARIAをサポートしているとのことです。今回興味深いと思ったのは、スクリーン・リーダーだけではなく、画面拡大ソフトウェアでもWAI-ARIAは活用されているという話でした。具体的にはZoomTextがaria-activedescendant(子孫の要素の中でアクティブなもの)を拡大画面の中に表示するとのことです。aria-activedescendantは、ユーザーが直接操作している要素とアクティブな要素が異なる、複雑なインタフェースで、アクティブな要素を表します。HTMLではselect要素を使ったドロップダウンメニューなどがこのような複雑性をもっています。具体的には「ユーザーが直接操作している要素」はselect要素、「アクティブな要素」は選択中のoption要素にあたります。

さらに、WAI-ARIAを使う場合に注意すべき点も紹介されていました。WAI-ARIAを使うことでブラウザーが動作を変えることはないものの、支援技術は動作を変える場合があることに注意しましょうという話がありました。特にapplicationロール(role="application")やdialogロール(role="dialog")でスクリーン・リーダーの操作モードが変わることが解説されていました。スクリーン・リーダーには文書を閲覧するためのモード(virtualモードやbrowseモード)とフォームなどで文字を入力するためのモード(formモードやfocusモード)をもっているものがあります。これらのスクリーン・リーダーは、applicationロールやdialogロールが指定された要素に移動すると操作モードが入力用に切り替わります。このモードは、キーボード操作ですべてのコンテンツ(リンクや入力欄だけではなく文字通りすべてのコンテンツ)にアクセス/操作できることを前提としています。つまり、コンテンツ側がキーボード操作を処理する必要があります。なお、スクリーン・リーダーのモードの詳細につきましてはアクセシビリティBlogのスクリーン・リーダーの仮想バッファーをご覧ください。

applicationロールやdialogロールがスクリーン・リーダーに与える影響は他のセッションでも言及されており、私が参加したセッションだけでもこの2日間で3つのセッションが言及していました。それだけ注意が必要な点だと感じます。

また、同じ3月20日、W3CはWAI-ARIA 1.0WAI-ARIA 1.0 User Agent Implementation Guideが勧告に達したことをアナウンスしました(W3C Blogの記事)。WAI-ARIAが安定した勧告になったことで、WAI-ARIAを利用する場面がますます増えるものと思います。注意すべき点は押さえたうえで、活用していこうと改めて思いました。

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